ふなばし動物医療センター 日々の診療

ふなばし動物医療センター(かつまペットクリニック)での日々の診療などをご紹介いたします。(HP: https://katsuma-pc.jp)

腹腔鏡下腎生検で膜性糸球体腎炎と診断した低アルブミン血症の猫ちゃん

⚠⚠手術の画像が含まれます。苦手な方は閲覧ご注意下さい⚠⚠

 

 

 

皆さんこんにちは。

今回は腹腔鏡下腎生検の実施により膜性糸球体腎炎と診断した低アルブミン血症の猫の1例を紹介させていただきます。

 

紹介する症例は1歳6か月の猫ちゃん、雑種、避妊済みの女の子です。

食欲の低下、くしゃみと涙を主訴に来院されました。来院時の症状からいわゆる猫かぜを疑い抗生剤による治療を実施しました。その後、くしゃみや涙などのかぜ症状は改善したもののいまいち食欲が戻らず体重が減っているということで健康診断のために血液検査を実施しました。

 

血液検査の結果は、総蛋白(TP)および蛋白質の1種であるアルブミン(Alb)がかなりの低い数値でした。(TP 4.5 g/dl、Alb 1.5 mg/dl未満)

また、腹部超音波検査にて十二指腸および膵臓の領域に微量の腹水貯留が認めらました。

 

そのため、低アルブミン血症の原因を探るために追加検査として、膵炎の検査(Spec fPL)、また、腎臓から尿に蛋白が異常に漏れているかどうかを確認するために尿検査(UPC)を行いました。その結果、Spec fPLは基準値でUPCはかなり高い値(UPC 18.53)でした。

これらの結果から、「腎臓から尿にアルブミンを中心とした蛋白質が漏れている」と判断しました。

腎臓から尿に蛋白質が漏れている原因が何か探るために腎臓の生検による病理組織検査にすすみました。

 

 

腎臓の生検では、主に超音波ガイド下、腹腔鏡下、開腹下生検の3つの方法があり、いずれかの方法で腎臓を確認しながら生検針を刺して腎臓の一部を採取します。

今回は猫の腎臓が小さく、生検による出血のリスクがあったため、出血の確認や止血が行いやすい腹腔鏡下での腎生検を実施しました。

腹腔鏡では、皮膚に5mm程度の小さな切開を加え、腹腔鏡と呼ばれる細型カメラをいれてお腹の中を確認することができます。

画像で指し示しているのが右の腎臓です。

生検針を腎臓に刺している様子です。

少量の出血が確認されています。

今回は2か所採材を行いました。

 

針を刺して腎臓の組織を採取した後、ガーゼを用いて止血を行っている様子です。

最後に、新たな出血がないことを確認して切開部位を1針縫合して終了です。

 

 

採取した組織の病理検査の結果、自己免疫性の糸球体腎炎と診断されたため免疫抑制剤の内服による治療を開始しました。

免疫抑制剤開始後は、総蛋白およびアルブミンの数値は基準値におさまり、食欲が元に戻り体重も増えました。

 

本症例の猫ちゃんは腎生検を行ったことで自己免疫性の糸球体腎炎を診断でき、免疫抑制剤を始めることができました。発症時の年齢が若かったこともあり、腎生検を行わずに診断がはっきりしないまま免疫抑制剤を使用することは薬の副作用などの将来的なリスクがあったことを考えると、腹腔鏡を使って出血を確認しながら腎生検を行い診断することができたのは良かったと思います。

 

当院では腹腔鏡下で、腎生検だけでなく肝臓や腸の生検、また一般的な犬の避妊手術や腹腔内の潜在精巣の摘出なども行っています。


ご自宅の愛犬愛猫ちゃんでお困りのことがありましたら是非ご相談ください。