今回は、猫伝染性腹膜炎(FIP)を発症した猫ちゃんについてお話します。
FIPとはコロナウイルスが猫に感染した後、突然変異で発症する感染症です。
腹水がたまる滲出型、腹水がない非滲出型に大きく分けられ、時折、脳や目に感染し症状を出すことがあります。
以前は、治療法がなく感染するとほとんど助かることのできない病気でした。
しかし最近では、FIPに効く抗ウイルス薬が何種類か存在しています。(GS441524、CFN、レムデシビル、モルヌピラビル)
その中でもモルヌピラビルは人の新型コロナウイルスの治療薬からできたもので、まだ新しい薬のため全国的に十分な使用データは揃ってないですが、他と比べ比較的安価に使用できます。
今回は、そのモルヌピラビルを使用した1例をお話します。
症例は避妊済みの生後10ヶ月の猫ちゃんです。
元気食欲の低下で来院されました。身体検査で可視粘膜の黄疸・発熱、血液検査で高グロブリン血症(TP9.0 GLB6.2) ・高ビリルビン血症・白血球増加がみられ、腹部エコー検査で腹水がみられたため抜去したところ濃黄色の液体が採取されました。以上の所見より、FIPが強く疑われたため、モルヌピラビルの治療を開始しました。以下治療成績です。
Day0 モルヌピラビル開始
Day8 腹水消失
Day15 元気低下、食欲あり、黄疸あり、発熱あり
Day36 元気低下、食欲あり、黄疸あり、発熱あり、貧血進行
Day37 急に神経症状を発症し入院。
Day39 一般状態回復。食欲低下ぎみ。モルヌピラビル増量
Day42 元気あり、食欲正常、神経症状少し残るが改善傾向
Day49 元気あり、食欲あり、神経症状消失、黄疸消失、発熱なし、貧血改善
現在 再発なし、症状完全に改善。
猫のFIPでモルヌピラビルを使用する場合、最低8週間以上は内服し続ける必要があります。
今回の治療をきっかけに他にも多くのFIPの猫ちゃんが助かることを願っております。