口唇にできた扁平上皮癌の症例です。
最近皮膚をよく掻く、唇から軽度の出血があるとの主訴で来院。
病変は口唇部に限局していますが、自壊していました。
病理検査の結果、扁平上皮癌と診断されました。
扁平上皮癌とは、犬の口腔内に発生する悪性腫瘍のうち、悪性黒色腫についで2番目に発生頻度が高い腫瘍です。
上顎、下顎、舌、歯肉、扁桃など様々な部位に発生します。一般的に局所浸潤率が強く、遠隔転移はしにくい傾向にあります。
しかし、扁桃に発生した扁平上皮癌の転移率は7割程度と高い傾向にあります。
治療の第一選択は外科的切除であり、完全切除ができれば予後は数年単位が期待できます。また、完全切除が困難な場合には術後の放射線治療や化学療法が考慮されます。
後日、病変の摘出を行いました。
これが術後1週間後の状態です。口唇を切除したので外貌が変わり歯が露出した状態になりました。多少お水やご飯はこぼれてしまうかもしれませんが、普段通り摂食はできます。
この症例は病変の摘出マージンがギリギリであるため、週に一度の通院で再発がないかチェックしています。放射線治療も提案しましたが、内科治療を希望されました。また、現在は分子標的薬(パラディア)とNSAIDs(フィロコキシブ)の投与をしています。
術後3ヶ月になろうとしていますが、再発はない状態です。