ふなばし動物医療センター 日々の診療

ふなばし動物医療センター(かつまペットクリニック)での日々の診療などをご紹介いたします。(HP: https://katsuma-pc.jp)

犬の会陰ヘルニアの一例

⚠⚠手術の画像が含まれます。苦手な方は閲覧ご注意下さい⚠⚠

 

 

 

 

 

 

 

 

会陰とは肛門と外陰部(ペニスの根本や膣前庭)およびその周囲のことをいいます、そしてヘルニアとは脱出を意味するラテン語のherniaで、臓器や組織が何らかの原因で弱くなりできた体内の裂け目・孔を通って、本来の位置から脱出した状態をいいます。

 

犬猫でおこる会陰ヘルニアは直腸や腹部の脂肪・膀胱や前立腺などが肛門周囲にとびだす病気です。

中高齢の未去勢の雄犬に多く、今回の症例も未去勢の子でした。

 

排便困難を主訴とし、便の軟化剤等試みましたが改善が見られず、出血も見られたため飼い主様と相談の結果、手術となりました。

 

治療として完治を目指すには外科手術が一般的です。

 

進行すると直腸憩室と呼ばれる肛門近くでの直腸の新たなお部屋ができてしまい、そこに便が貯留することで排便がうまくいかなくなることもあります。その結果、直腸壁にも負担がかかることになり最悪の場合、破れることもあり、敗血症の様な状態に陥る可能性もあります。

 

外科手術では、ヘルニア孔を閉鎖するためにいくつかの方法がありますが、未去勢であることから総鞘膜(精巣を被覆している膜)を利用した骨盤隔膜の再建を実施しました。

 

ヘルニア物質(今回は腹腔内脂肪)を元の場所に戻した後、ヘルニア孔の周囲にある筋肉と総鞘膜を縫合し閉鎖としました。

 

今回のケースではヘルニア孔の大きさ等、グレードが肛門の左右とも同様だったため両側とも同じ術式で行いました。

 


術後経過は排便は正常となり、出血も治まりました。

 

会陰ヘルニアは、前述の通り未去勢での発症が多く、重症化することで命に関わる病気なので、早期発見または去勢による予防が重要となります。

 

排便に時間がかかったり、肛門周囲の腫れがある場合は本疾患を疑うことができるため、気軽に当院までご相談してください。