ふなばし動物医療センター 日々の診療

ふなばし動物医療センター(かつまペットクリニック)での日々の診療などをご紹介いたします。(HP: https://katsuma-pc.jp)

ラブラドール・レトリバーの肘関節内側軟骨損傷(MCD) に対してPAULを実施した一例

⚠⚠手術の画像が含まれます。苦手な方は閲覧ご注意下さい⚠⚠

 

 

こんにちは。

今回は整形疾患に関する症例報告をさせていただきたいと思います。

手術中の画像がありますので、苦手な方はご注意ください。

 

症例は、ラブラドール・レトリバー、4歳齢の女の子です。

「1ヶ月程前から時々見られる左前肢跛行」という主訴で来院されました。

 

身体検査では、左肘関節の可動域の減少(肘が曲がりにくい状態)が認められ、歩行検査では、左前肢を地面につく時に頭を上げる動作(ヘッドボブ)が認められました。

ヘッドボブとは、頭を上下に移動させて、痛い肢が着地する時に頭を上げて負荷を軽減させる動作です。

また、レントゲン検査では、下の写真のように、肘関節の周囲に骨棘形成を確認(矢印)し、関節炎が起こっている可能性がありました。

 

確定診断のため、関節鏡検査を実施したところ、下の写真のように、肘関節の内側の関節軟骨(正常は白色)が消失し、軟骨の下の骨が露出(ピンク色の部分)している状態でした。

 

 

診断名は、『左肘関節内側軟骨損傷(Medial Compartment Disease)』でした。

成長期から肘関節の形成不全があることにより、持続的に肘関節が不安定になり、関節軟骨の浪費・欠如(主に肘関節内側の関節面)が起こります。その結果、MCDという状態になります。

治療は、PAUL (近位尺骨外反骨切り術)という手術を実施しました。


この手術は、前腕の尺骨近部を骨を切って、角度を変える事により体重を内側から外側へ変化させる方法です。これにより、内側にかかる負担を軽減することができます。

 

 

この疾患は内科的治療(痛み止めやサプリメントなど)では完治することが難しいため、早期に診断し、外科的治療を行うことが大事です。

肘関節形成不全症は、大型犬での発生率が高い疾患です。わんちゃんは前肢に体重の約60%を乗せて歩いているため、発症した場合、生活の質を著しく低下させる整形外科疾患の一つとされています。

片側の前肢に体重をかけていない、歩行中頭が上下する、散歩や運動を嫌がるなどの症状が見られた場合や、その他気になる症状がある場合は一度ご相談にいらして下さい。