今回は腫瘍症例について報告させていただきたいと思います。
症例は、チワワとマルチーズのミックス、14歳齢の男の子です。
左前肢肢間のできものを主訴に来院されました。
肢間には赤色ドーム状の1cm大の腫瘤が認められ、
細胞診検査(針を刺して細胞を採取し顕微鏡で診断する検査)を実施したところ、「形質細胞腫」という腫瘍であることが分かりました。
良性の腫瘍ではありますが、切除手術を実施しました。
その後、経過は良好で同部位への再発は認められませんでしたが、手術約1ヶ月後からその他の皮膚に形状の似た腫瘤が多数確認されました。
大小合わせて計15個の腫瘤を確認し、全て切除しました。
病理検査をしたところ、15個全てが「形質細胞腫」という結果でした。
犬の皮膚形質細胞腫は、中齢から高齢犬の体幹および四肢の皮膚に多く発生する良性腫瘍です。
治療は外科手術による摘出で、予後は良好です。
しかし、まれにこの腫瘍が皮膚に多発することがあり、「皮膚形質細胞症」と呼ばれています。
皮膚形質細胞症では、10-100個ほどの病変を作るため、外科手術での治療が難しく、化学療法が適応になる場合があります。
そのため、早期発見・早期治療が大切です。
この子は現在、手術後3ヶ月が経ちますが、再発もなく元気に過ごしています。
皮膚腫瘤は見た目や大きさでは良性や悪性の判断がつきません。
また、毛に隠れてしまい見えにくいことも多いです。
そのため、定期的にペットちゃんの体を触っていただくことが大切です。
その際、気になるしこりなどがある場合は一度動物病院にいらしてください。