今回は、膀胱鏡を用いた 膀胱結石の摘出についてご紹介します。
結石に対する治療は、結石のある場所や大きさ、種類によって異なります。
内科治療としては、療法食や内服薬による結石の溶解療法、また、細菌感染による結石の形成が疑わしい場合には抗菌薬を用いることもあります。
外科治療としては結石摘出術があり結石が存在する場所により、腎結石では腎切開、尿管結石では尿管切開、膀胱結成術では膀胱切開術などが行われます。
一般的には、膀胱内にできてしまった大きな結石や、溶解療法で溶けない成分の結石とわかっている場合に外科摘出が選択されます。
しかし、膀胱切開による膀胱結石摘出では、手術の侵襲により術後に血尿がでることが多いです。
膀胱鏡を用いた膀胱結石摘出では、膀胱を切開せずに結石を尿道経由で摘出することが可能です。
そのため、膀胱を切開することなく結石を摘出することができ、術後の血尿などをほとんど起こすことなく当日退院も可能な手術になっています。
また、尿道から膀胱までもカメラでみることができるため、下部尿路がきれいかどうかの評価もすることができます。
欠点としては、実施できる適応症例に限りがある点で、当院では犬の雌のみ適応で、結石の大きさ2~3mm以下のもので適応になります。
ただ、適応症例であれば、皮膚と膀胱を切開することなく摘出が可能なため、結石摘出の際のとても良い選択肢の1つになると思います。
適応症例かどうかは、尿検査や腹部超音波検査、腹部レントゲン検査によって判断します。
こちらは腹部レントゲンの画像で、膀胱内の緑の丸で囲った部分に結石の集塊が認められます。
結石の集塊の中で最も大きそうな結石のサイズを測ってみると、約1.3mm程度でした。
本症例は雌の犬で内科治療を行っても結石は溶解しなかったため、膀胱鏡を用いた膀胱結石摘出の適応と判断しました。
膀胱鏡カメラを膀胱内まで進めたときの画像です。
画像中央やや下に黄褐色のものが先ほどのレントゲンに写っていた結石です。
表面がつるつるしていることが分かります。
結石を取り除き、残りがないかチェックしているところです。
カメラで膀胱内をくまなくみることで、まだ1つ結石があることが分かります。
残りの結石も摘出後、膀胱から尿道の移行部、尿道など結石が残りやすそうな場所もくまなくチェックして、それでもないことを確認して終了となります。
以上のように、適応症例であれば皮膚や膀胱を切開することなく膀胱結石の摘出が可能です。少しでも泌尿器症状で気になることがあれば、ぜひご相談ください。