こんにちは、今回は肝臓病の症例についてお話しします。
初めに、、、
肝臓とは体に必要な蛋白や糖などを作り、体に有害な毒性物質などを分解する臓器で、体にとってとても重要な臓器です。
肝臓がなんらかの理由で障害が受けた時に血液検査で肝酵素(ALT、AST、ALP、GGTなど)が上昇します。
その原因は肝臓病原発の時もあれば他の病気から二次的に起こるときもあります。
肝酵素上昇症例はその原因を特定することが重要で、時には除外診断も必要になることもあります。
肝臓病は多くの場合無症状が多いです。
そのため、見つけるのが遅れることも多いため、定期的な健康診断が必要です。
嘔吐や下痢、食欲不振などの症状が出た時は肝臓病の場合かなり進行してる時がほとんどです。
さて、今回の子はトイプードルの未避妊の女の子で、3ヶ月以上持続する重度な肝酵素上昇(ALT1000以上、AST171、ALP436、GGT67)を示しており、一般的な内服治療を試しましたが、全く改善が見られませんでした。
また、症状として元気食欲の低下、間欠的な嘔吐が見られました。
そこで、病態把握の為に、腹腔鏡下で肝臓生検を実施しました。
腹腔鏡は開腹するよりも侵襲性が低いため動物の負担が少なく、しっかりとした組織を取ることができるため病理検査で確実な診断につながります。
また、肝臓全体をカメラで目視できるというメリットもあります。
肝生検の病理診断結果は、“慢性肝炎“でした。
診断結果より、今までの一般的な治療に加えてステロイドと免疫抑制剤の治療を開始しました。
下のグラフは生検後の肝酵素(ALT)の動向を表しています。
グラフから分かる通り、術後の治療変更によって劇的な改善が見られています。
また、他の肝酵素(AST、ALP、GGT)も生検後、順調な回復を見せています。
現在、この子は元気も食欲も出て元気に過ごせています。
持続する肝酵素上昇に対しては生検することも一つの選択肢であるということを改めて感じさせられる一例でした。