ふなばし動物医療センター 日々の診療

ふなばし動物医療センター(かつまペットクリニック)での日々の診療などをご紹介いたします。(HP: https://katsuma-pc.jp)

猫ちゃんの爪刺さりによるパッドの損傷

猫ちゃんの爪切りは定期的に行いましょう。

 

先日、指のどこかから出血しているという症状で猫ちゃんが来院されました。



指を触ると怒るので、飼い主さんは爪切りはおこなっていませんが、自分で爪を研ぐ猫ちゃんでした。

毎日爪を研ぐ猫ちゃんでも、爪が伸びすぎると丸くなり、肉球に刺さって出血してしまいます。

基本的には家猫ちゃんが行う爪研ぎはストレス発散目的が多く、外猫ちゃんの様にアスファルトで爪が自然と削れる事はありません。

また、老齢で関節炎があり、痛みで爪が研げなくなる子もいます。


家猫ちゃんの場合、爪が伸びすぎないように月に一回はお家での爪切りをお勧めします。


家だと怒って嫌がる子は、爪切りだけでも構いません、病院にご相談ください。


 

 

猫の直腸腺癌における手術と抗がん剤で寛解した一例

⚠⚠手術の画像が含まれます。苦手な方は閲覧ご注意下さい⚠⚠

 

 

 

今回は猫ちゃんの直腸に発生した悪性腫瘍(直腸腺癌)を手術と術後の抗がん剤緩解維持できてる症例についてお話しします。

高齢猫ちゃんが排便困難を主訴に来院。

触診にて多量の糞便の貯留を確認したため、直腸検査したところ、直腸出口から5〜10センチ程度入った位置に硬結腫瘤が認められため、当主訴の原因と考え、鎮静下で内視鏡による組織生検を実施しました。

結果は、上記の通り直腸腺癌でした。

排便困難の緩和が何よりもこの子のQOLの改善につながると考え、転移の有無を見るためにCT検査を実施し、その後外科的な摘出に踏み切りました。

術式は「直腸全層プルスルー」という方法で、直腸を肛門出口から反転させて引っ張り出し、腫瘍がある部位を切除し、残った直腸の断端を肛門側の直腸に吻合するという方法をとりました。

CTでは周囲リンパ節の腫脹が見られたため、術後の抗がん剤も実施しました。

 

幸い、術後半年経ちますが元気に過ごしてるそうです。

猫ちゃんの便秘には様々な原因がありますが、いつもと何か違う、、なんてことがあればすぐに来院してください。

高齢の未去勢オスのわんちゃんに見られたセミノーマ

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症例は10歳、ゴールデンレトリーバー、未去勢。

健康診断を目的として当院を来院されました。





一般状態は健康でしたが、左右の大きさの違う精巣が触知されました。

 

精巣はこのように腫大していたり、左右で大きさが異なると腫瘍化している可能性があります。



良性のものが多いですが、中にはセルトリ細胞腫という性ホルモンを過剰に分泌してしまうことで、皮膚症状や骨髄の造血機能を抑制(骨髄抑制)してしまうものもあります。

この骨髄抑制は重度の貧血が生じてしまったりと、致死的状況に至ることもあります。

また、中には精巣腫瘍がリンパ節に転移してしまうケースもあります。




本症例では精巣の摘出を行い、病理組織検査の結果は良性のセミノーマという診断結果でした。

 

 

 

精巣腫瘍は、高齢の雄犬や精巣が下降せず腹腔内に停留してしまう潜在精巣で多く見られます。

 

精巣の大きさが左右で違う、精巣が一つしか降りてきていないなどの症状がある様でしたらいつでもご相談ください。

 

横隔膜ヘルニアの猫ちゃん

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野良猫ちゃんを保護したとの事で、来院した猫ちゃんが横隔膜ヘルニアでした。

 

安静時の呼吸は正常でしたが、横に倒したり、激しい運動をすると呼吸が早くなるという症状がありました。

横隔膜ヘルニアは胎生期の横隔膜形成不全による先天性のものと、交通事故などによる後天性のものがあります。この猫ちゃんは年齢不詳で、いつから横隔膜ヘルニアだったのか不明です。

先天性か後天性かも不明ですが、先天性の横隔膜ヘルニアだった場合、新生児の段階での死亡率が高く、実際に症例として遭遇するのはまれであるとされています。

 

手術前のレントゲン像では横隔膜の穴から、肝臓、胃、腸が胸腔内に入り込んでおり、肺が背側においやられていました。この状態では肺が満足に膨らまないため、呼吸が苦しくなってしまいます。

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手術中の写真で分かるように、横隔膜の左の大きな穴から臓器が胸腔に入り込んでいました。

 

横隔膜ヘルニアの合併症は50%の確率で起きるとされています。報告される合併症は気胸、臓器不全、肺水腫、消化管の閉塞があると言われています。

この猫ちゃんも術後に気胸と食道拡張が認められました。気胸に対しては手術中に胸腔ドレーンの設置を行ない、胸腔内の空気を抜去しました。食道拡張は内科治療を行いました。

 

退院後、胸腔内にあった臓器がすべて腹腔内に戻っています。激しい運動をしても呼吸は問題なく、再ヘルニアも起きていません。食欲もあり、新しいお家で楽しく暮らしています。

 

脛骨粗面剥離骨折の犬の1例

今回の症例は生後約6ヶ月のワンちゃん。

左後肢の脛骨粗面の剥離骨折で来院されました。

レントゲン検査にて、右の後肢と比べると、左後肢の脛骨粗面の近位の変位が確認できます。

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正常な右後肢

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脛骨粗面が骨折した左後肢

 

この部位の骨折は、生後10ヶ月以下の若齢の子(成長板が閉鎖する前に起こりやすい)に認められることがほとんどです。

今回はピンとテンションバンドワイヤーを用いて固定を行いました。

 

術後約40日目に成長板が閉鎖しかけていたのを確認し、抜ピン処置を行いました。

現在挙上や跛行などの症状はなく、経過良好です。

指の皮膚にできたメラノサイトーマ(皮膚黒色腫)

今回は、後肢の指の皮膚にできた腫瘤の紹介です。

 

中年齢のミニチュア・シュナウザーの子で右後肢の第3指に黒色の腫瘤が見られて精査を主訴に来院されました。

検査を目的に外科的切除しました。(切除生検)

 

結果はメラノサイトーマ(皮膚黒色腫)でした。

この腫瘍は良性で、きれいに切除すれば予後良好です。



 

似たような腫瘍にメラノーマ(悪性黒色腫というものがあります。

両者とも、由来細胞はメラニン色素産生細胞と同じです。


細胞や核の形態や、腫瘍細胞の浸潤程度などから総合的に良性、悪性を判断していきます。



診断には、細胞診と組織診断とがありますが、細胞診だけでは良性、悪性の判断が難しい場合があり、組織生検による最終診断が重要となります。

 

悪性黒色腫の場合は非常に悪性度が高い場合があり、治療には積極的な外科処置(断脚、断指を含む)を行わなければならない時があります。

また追加の化学療法を行う場合もあります。



今回の症例では、飼い主様と相談し、腫瘤を最小マージンで切除し、悪性であれば追加の検査、治療を行うこととしました。結果は良性の皮膚黒色腫でしたので、今回の手術で経過観察としました。

 

腫瘍の中には切除して検査しないと診断がつかないものもあります。

早期に切除し、診断することで、最適な治療を選択できます。

皮膚に何か見つけた時は、早めの受診をおすすめします。

角膜損傷の原因が東洋眼虫だった1例

潰瘍性角膜炎とは眼の表面にある角膜が物理的な刺激などによって損傷した状態です。

損傷の深さによって、角膜裂傷角膜びらん角膜潰瘍デスメ膜瘤角膜穿孔と病名が異なり、治療法も異なります。

特に角膜びらんより深い損傷になった場合、麻酔をかけた処置が必要になることがあり治療も複雑化します。

 


今回の子はバーニーズマウンテンの6歳の避妊雌で、左眼の羞明結膜充血を主訴で来院しました。


角膜特殊染色で角膜裂傷が確認されたため、点眼と内服の内科治療を開始しました。

徐々に羞明がなくなり傷も修復されて良くなりつつありましたが、3週間目に再度羞明が確認されました。



再チェックした結果、今度は角膜びらんが確認されました。

 

(角膜びらんとは角膜の上皮が部分的に剥がれてとれた状態であり、難治性の場合、治療にはデブリードメントや角膜点状切開や角膜格子状切開といった外科的介入が必要になります。)


 

そこで、確認した当日に角膜点状切開をするために点眼麻酔をかけたところ、眼瞼内に東洋眼虫を確認しました。

 

 

 

 

 

東洋眼虫とはメマトイというハエから犬などの結膜嚢内に寄生する寄生虫で、日本では温暖な気候の西日本に多いです。

 

たび重なる角膜の異常はこの寄生虫が原因と分かったため、麻酔下で眼内の虫を摘出し(5体)、角膜点状切開を行いました。

 




その後、2週連続で駆虫薬を飲んで点眼も継続した結果、びらん部位はしっかりきれいな角膜に戻りました。

 

当院でも大変珍しい症例でした。