潰瘍性角膜炎とは眼の表面にある角膜が物理的な刺激などによって損傷した状態です。
損傷の深さによって、角膜裂傷、角膜びらん、角膜潰瘍、デスメ膜瘤、角膜穿孔と病名が異なり、治療法も異なります。
特に角膜びらんより深い損傷になった場合、麻酔をかけた処置が必要になることがあり治療も複雑化します。
今回の子はバーニーズマウンテンの6歳の避妊雌で、左眼の羞明と結膜充血を主訴で来院しました。
角膜特殊染色で角膜裂傷が確認されたため、点眼と内服の内科治療を開始しました。
徐々に羞明がなくなり傷も修復されて良くなりつつありましたが、3週間目に再度羞明が確認されました。
再チェックした結果、今度は角膜びらんが確認されました。
(角膜びらんとは角膜の上皮が部分的に剥がれてとれた状態であり、難治性の場合、治療にはデブリードメントや角膜点状切開や角膜格子状切開といった外科的介入が必要になります。)
そこで、確認した当日に角膜点状切開をするために点眼麻酔をかけたところ、眼瞼内に東洋眼虫を確認しました。
東洋眼虫とはメマトイというハエから犬などの結膜嚢内に寄生する寄生虫で、日本では温暖な気候の西日本に多いです。
たび重なる角膜の異常はこの寄生虫が原因と分かったため、麻酔下で眼内の虫を摘出し(5体)、角膜点状切開を行いました。
その後、2週連続で駆虫薬を飲んで点眼も継続した結果、びらん部位はしっかりきれいな角膜に戻りました。
当院でも大変珍しい症例でした。