ふなばし動物医療センター 日々の診療

ふなばし動物医療センター(かつまペットクリニック)での日々の診療などをご紹介いたします。(HP: https://katsuma-pc.jp)

脾臓血管肉腫の犬の一例

今回は脾臓血管肉腫に対して脾臓摘出術を行なった子についてお話しします。

10歳のゴールデンレトリーバーの女の子。

 

最近、どことなく元気がなく、えずく様子が見られたという主訴で来院されました。

 

血液検査にてCRPの上昇が認められたため、追加で腹部超音波検査を行いました。

超音波検査では、脾臓に腫瘤が確認されました。

犬種と年齢より、脾臓血管肉腫が疑われたため、後日、CT検査と脾臓摘出術を行いました。

結果は脾臓の血管肉腫という結果でした。

そのため、術後に抗がん剤(ドキソルビシン)の投与を行いました。

今現在、術後2ヶ月になりますが、元気食欲はあり、転移や再発は確認されておりません。

 

血管肉腫は非常に悪性度が高い場合が多く

生存期間中央値は、脾臓摘出術単独では約3ヶ月

術後アジュバント療法(抗がん剤治療)を行なった場合は約6ヶ月

と言われています。

 

今回の子は体調の変化に飼い主様がいち早く気づき、比較的早期に発見することができ、安全に手術を行うことができました。

少しでもいつもと違うことがあれば、獣医師に相談していただくことをおすすめします。

 

歯肉口内炎に対して下顎臼歯抜歯を行った猫ちゃん

⚠⚠手術の画像が含まれます。苦手な方は閲覧ご注意下さい⚠⚠

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今回の症例は8歳の猫ちゃんで、食欲の低下を主訴に来院されました。



猫の歯肉口内炎は、歯肉と口腔粘膜に炎症を起こす原因不明の病気です。

歯垢や歯石、細菌に対するアレルギー反応とも言われています。
重症になると、痛みでご飯が食べられなくなってしまうため、早期の治療が必要です。


治療は抗生物質ステロイド免疫抑制剤などの投与になりますが、一時的には症状の改善がみられても完治にはつながらないと考えられており、抜歯などの外科的治療が必要になることが多いです。

抜歯治療後の反応率は80%程度で完全に治る子はその半分くらいと言われています。

 

 

口の中を見てみると、奥歯に歯石が付着しており、歯に接触する部分の粘膜が赤く腫れ上がり出血もしています。

この子はステロイドの注射で炎症を抑える治療していましたが、効果がなくなってきたので抜歯を行うことになりました。



今回は両側下顎の臼歯抜歯を行いました。

 

こちらが抜歯後の写真です。

退院後はやわらかい食事を与え、徐々にドライフードに切り替えていきます。

痛みが残るときは補助治療として、抗生物質ステロイド免疫抑制剤インターフェロンサプリメントなどを併用して炎症や痛みを抑えていきます。

 

この子は退院後からすぐに食欲が戻り、痛みがなく元気に過ごしています!




猫ちゃんの歯周病、歯肉炎、口臭など、少しでも気になる点がありましたら早めにご相談いただければと思います!

 

両側の会陰ヘルニアの犬の1例

⚠⚠手術の画像が含まれます。苦手な方は閲覧ご注意下さい⚠⚠

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今回の症例は9歳雄の雑種のわんちゃんです。

便の出が悪くなってきたとのことで来院されました。

 

身体検査をしてみると、肛門の脇が膨らんでおり、直腸検査などから会陰ヘルニア」と診断しました。

左側の方が重度で、カチカチに固まった便が大量に蓄積していました。



会陰ヘルニアはお尻周りの会陰部の筋肉が薄くなってしまう病気で、未去勢の雄に多いです。

去勢手術をすることで予防ができるとされており、原因は男性ホルモンが関与していると言われています。

会陰部の筋肉が萎縮して“緩い”状態になることで、その隙間に直腸や膀胱などの臓器が飛び出してしまいます。

そのため、放っておくと致死的な状態を招く恐れがあり、早めに外科的整復が必要な疾患です。



本症例はまず去勢手術を行い、その後〝総漿膜″という精巣が収まっている膜を使用して会陰ヘルニアの整復を実施しました。


 

下の写真の指の部分がヘルニア孔になります。



周囲の筋肉に総漿膜を縫い合わせることでヘルニア孔を塞いでいきます。


ヘルニア部はきれいに整復されました。

経過はとても順調で、今では便も毎日スムーズに出ています。

 

 

・便や尿の出方がおかしい

・最近よく踏ん張っている時間が長くなった

・お尻が脇が膨らんでいる


このような症状が見られた場合は一度診察にいらしてください!

 

 

 

 

子宮蓄膿症の猫の一例

⚠⚠手術の画像が含まれます。苦手な方は閲覧ご注意下さい⚠⚠

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2.3日前からの食欲低下陰部からの排膿を主訴に来院されました。

血液検査で白血球数の重度減少、エコー検査で子宮内に膿を確認。


以上の所見から、細菌感染による白血球消費亢進を伴った子宮蓄膿症」と診断し、

その日のうちに卵巣子宮全摘出術抗生剤治療を開始しました。


以下の写真は開腹時の中に膿を含んだ子宮の写真です。

 

術後、2日目の白血球の値は上昇し、正常より高値を示しました。

引き続き抗生剤治療を継続していった結果、術後4日目には食欲は通常通りに戻り、

術後14日目には白血球数も正常に戻り、完治へと進んでいきました。

わんちゃんに比べ猫ちゃんの子宮蓄膿症はまれですが、起こらないわけではありませんので注意が必要です。

肝臓腫瘍に対して肝葉切除手術を行なったジャックラッセルテリアちゃん

10歳のジャックラッセルテリアの女の子。

もともとの内分泌疾患があり、

定期的に血液検査を行なっていました。

その子に食欲不振が見られたため、腹部の超音波検査を行いました。

そこで、肝臓の左葉に6cm大の腫瘤を確認しました。

 

さらなる精査のため、CT検査針生検による細胞診検査を実施しました。

検査結果は、肝臓の外側左葉に腫瘤があり、

高分化型肝細胞癌もしくは肝細胞腺腫を疑うというものでした。

良性腫瘍、悪性腫瘍と両方の可能性がありましたが、

飼い主様と相談をし、手術にて摘出することにいたしました。

 

手術は、肝臓外側左葉摘出術というものを行いました。

腫瘤は大網に少し癒着が見られましたが、無事摘出することができました。

病理検査結果は肝細胞腺腫でした。

 

この手術は、大きく皮膚を切開しないといけない手術でしたので、

手術中、術後の疼痛管理にいつも以上に注意が必要でした。

手術後は、1週間ほど、炎症所見が見られましたが、

その後は、元気食欲もあり、皮膚の傷口も綺麗になっています。

 

肝臓の腫瘍はかなり大きくならないと症状を示さないものがあります。

早期発見、早期治療で予後が良好なものもありますので、

症状がなくても、血液検査や超音波検査にて定期的にチェックすることをおすすめします。

 

尿管結石摘出を行った猫ちゃん

皆様こんにちは。


今回は、健康診断プレミアムコースにて、左の尿管結石が認められた猫ちゃんです。


レントゲンでは後腹膜エリアに結石の陰影が確認され、
超音波検査では腎臓の腎盂が拡張しており、尿管結石による尿路閉塞で水腎症になっていました。


血液検査ではそれに伴い腎数値の上昇が認められました。

 

左の腎臓の腎盂腎瘻チューブを設置し、尿の逃げ道を作った上で、尿管に詰まった石を尿管切開によって除去しました。

 


術後5日で腎瘻から造影し、尿管の疎通性を確認しました。


その後の尿管の再閉塞もなく、順調に腎臓の数値も落ち着いています。


 

健康診断の大切さが思い知らされた症例でした。

早期発見早期治療が医療ではやはり大事になります。


これから春の健診シーズンですので、中高齢のペットちゃんはもちろん、若い子でも定期的に健康診断を行っていただければと思います!

 

膀胱結石の猫の一例 

今回の症例は、7歳の雑種猫ちゃん(避妊雌)。

血尿が続いており、トイレで排尿姿勢をとるが、なかなか尿が出ないとのことで来院。



膀胱のエコー検査を行ってみると、膀胱内にシャドーを引く白い塊が確認されました。

レントゲン検査において、多数の結石が膀胱内に確認されたため、『膀胱結石』と診断しました。

 

 

 

また、尿検査では結石や結晶が確認できず、膀胱内にある膀胱結石がどのような成分かは不明でした。

 

通常は、食餌療法や内科療法で膀胱結石が小さくなったり消失することもあります。

食餌療法や内科療法でも改善が見られない場合は手術で摘出する必要があります。



この子の場合は多数の結石があり、食餌療法のみでは血尿が治らないと判断し、飼い主様とご相談の上、早期に膀胱結石摘出術を行うこととなりました。

 

手術により膀胱を切開し、確認すると合計で11個の結石がありました。

 

術後のレントゲンおよび結石の写真です。

結石成分検査の結果、『シュウ酸カルシウム』という成分でした。

シュウ酸カルシウム結石は食餌療法などで溶解・予防することが難しい結石であり、手術による摘出が必要となります。

 


この猫ちゃんは手術後、症状が改善し、元気に過ごしています。

 

 

もし、わんちゃん猫ちゃんに頻尿や血尿などの症状があれば動物病院にご来院ください。